アスペルガー(発達障害)の夫や妻(またはパートナー)と上手くコミュニケーションが取れないことから自信を失ったり、まわりに相談しても理解されず、精神的に身体的に苦痛が生じることをカサンドラ症候群と言います。
意思疎通の難しさの積み重ねから、気づかないうちにカサンドラ症候群になっている人も多く、症状は、自己評価の低下や片頭痛、パニック障害、抗鬱、無気力、不眠症など、色々な形であらわれます。
カサンドラ症候群の「カサンドラ」とは、ギリシャ神話に出てくるトロイの王女のことです。
太陽神アポロンはカサンドラに予言能力を授けたのですが、その後、アポロンから「予言を誰も信じない」という呪いをかけられました。
カサンドラには予言能力は残っていましたが、呪いのため、誰にも信じてもらえなくなりました。
カサンドラ症候群はこの神話が元になっていて、アスペルガーのパートナーを持つ人が、パートナーの言動をまわりの人に相談しても信じてもらえなかったり理解してもらえないことからこの名前がつきました。
正式な病名ではありませんが、心療内科等でカサンドラ症候群と言われる人が増えているようです。
夫婦だけでなく、家族、恋人、会社の同僚などの間でもカサンドラ症候群になる人もいます。
※解説では、「アスペルガー(発達障害)の夫や妻・・・」と書いてあることが多いですが、パーソナリティ障害などの人が相手でも同じではないかと感じています。
お客さまの中にも、カサンドラ症候群やその一歩手前にいる方がいらっしゃいます。
よくあるのは、目の前にいる人が発達障害だと知らなかったというパターンです。
多くの場合は相手(本人)も自分の発達障害に気づいていません。
だから、トラブルになるんですね。
例えば
「家の片づけをしておいて」とお願いしたら、家のものがすべて無くなっていたとか。(実話です)
仕事の指示をしても伝わらず、結局自分の負担が増えて心も身体も疲れてしまったとか。(実話です)
想像すれば分かるはずのことが通じませんので、腹が立って責めたくなります。
でも、相手は何がいけないのか分かりませんので、責められたことに反応して喧嘩になったりします。
こういったことを繰り返していると、段々と、「相手ではなく自分がおかしいのか?」「自分はダメな人間なのか?」となってくるんですね。
これがカサンドラ症候群の始まりです。
中には、苦しくなって心療内科に行ったら、「おそらく相手がアスペルガーでしょう」と言われた方もいます。
私の兄は母にパチンコに行くことやお金を集ることを咎められるとスネます。
スネるというか腹を立ててご飯も食べなくなります。
パチンコやお金がどうこうではなく、責められたということに対して反応するんですね。
本人は「おふくろはいつもうるさい」と言っていますから、何で言われているのか、何がいけないのか分かっていないのは明らかです。
私から見ると母は言葉が足りないのですが、母は「普通なら分かるだろう」という前提で話していますので、兄には通じないんです。
例えば、「何でパチンコに行ってお金を使うんだ!ちゃんと家にお金を入れなさい」ではなく、
「お金がなくなると食費がなくなってご飯が食べられなくなるし、水道光熱費も払えなくなるからお風呂にも入れない。そうなったらイヤでしょう?困るでしょう?」
と言えば、通じるかも知れません。
日本で発達障害がクローズアップされ始めたのは2000年以降です。
それに伴って、大人の発達障害も増えてきました。
しかも、発達障害は十人十色な上に、一般には認知度も低く、「普通は分かるだろう」という考えが前提のコミュニケーションから、知らない間に心が疲れてしまっている人も少なくありません。
もしかしたら私の近くにいる人もそうかも。
そう思ったときの一番の解決法は「理解すること」です。
発達障害がどういうものかを理解出来れば、コミュニケーションの方法も少しずつ分かるようになります。